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2016/06/03

大学生は自立した人間なのか?

                                          メンタルヘルスアドバイザー
                                             市来 真彦
                                          (精神科医・精神保健指定医)
 保護者のみなさま、こんにちは。私は教職員と学生のメンタルヘルスにかかわる事案に対して専門的な立場から助言をするメンタルヘルス・アドヴァイザーとして本学にかかわっているのですが、気がつけば今年で15年目になります。「自分の若い頃は・・・」という大人たちを見て、「時代が違うんだよ、じ・だ・いが!」と言っていた自分が、いつのまにか「自分の若い頃は・・・」と感じるようになって苦笑している今日この頃です。
 十年一昔と言いますが、実際私が普段身をおいている精神医学の分野は、だいぶ変わってきています。私が精神科の医師になった20数年前は、患者さんは困りに困りきってから受診されるので、即入院もしくは、入院にはならなくても、働いている人であれば休職、学生であれば休学しなければならなくなる方がほとんどでした。そのような患者さんを治療するためには必ず薬を使い、そしてある程度の期間(場合によっては一生)薬を飲み続けていただかなければなりません。そのような経験から、私は「病気にならないようにする」、「病気になったとしても早く医療につなげるようにする」、「病気になって一旦回復したあとに、再発しないようにする」といったような「予防」という考え方を大切にするようになりました。しかし「うつ病」の啓発が進んだ影響もあって、患者さんたちは軽いうちに受診するようになりました。これは良い側面もあれば、残念な側面もあるように思います。良い側面は、症状としては重症化せず、薬を使わずに済み、そのために回復するまでの時間が短くて済むようになることです。一方残念な面は、薬が必ずしも必要ではない代わりに、生活指導などの薬剤調整以外に大切なことを教える必要があるのですが、あまりに多くの患者さんが押し寄せるために、十分な診察時間を取れないということです。
 さて、だいぶ変わってきているのは精神医学の分野だけではなく、大学も同じです。いわゆる「今どきの」学生には、ひとことで言えば「たくましさがなくなってきた」という印象です。一昔であれば、ちょっと横道にそれても、いざというときには自分から馬力を出して直面した課題を乗り越えてゆくという学生が少なくなかったのですが、最近の学生は、ひとたび横道にそれてしまうと、自力で元の道に戻るのが困難になっているようです。そのような特性のあるお子さんたちに、いきなり「もう大学生なのだから、何でも自分でやりなさい!」と言って突き放すように接するのは感心しません。「自分の若い頃は・・・」といって接することも解決にはなりません。私は「自分の若い頃は・・・」とボヤきたくなったときに心がけていることがあります。そのようなときは、口には出さずに、「変わった時代の中で自分がとる役割」をどのようにするかを考えてみるのです。大学生という時期は、社会人になる前の時期でもあるので、保護者のみなさまにとっては、お子さんを自立した人間に育て上げる集大成となる大事な時期になりますので、この時期のお子さんに合った接し方、今の時代のお子さんにあった接し方をする必要があります。「今まで過保護に育ててしまったので大丈夫でしょうか」、「家元を離れてしまっていても出来るのでしょうか?」いろいろなご心配があることだと思います。しかし、結局はやるかやらないか、二つに一つです。「いつやるの?今でしょう!」
 では何をすればよいのでしょうか。「こうすれば絶対に成功します」ということを教えて差し上げられれば良いのですが、残念ながらそのようなものはありません。しかし生活の中で破綻を来たして精神科を受診する大学生や比較的若い社会人たちをたくさん見てきたので、「こうしたらほぼ失敗します」ということはある程度わかっています。そこで次号から、社会に送り出してゆくためにはどのようなところに注目して親としての役割を果たしてゆけばよいのか、そのポイントをお話してみたいと思います。